あぶさん引退、そしてその号もう一つのあの漫画について。

いやあ、ついにあぶさんが引退してしまいましたね。
景浦安武62歳、37年間の現役生活にピリオドですよ!!
・・・ってもう4日前の出来事なんですけどね(苦笑)。


僕が「あぶさん」を初めて読んだのは小学校3年生の時で。
従兄弟の家とかに遊びに行くとき、決まって漫画雑誌を買ってもらって電車の中で読んでいたその時だったと思います。
(小学生にビッグコミックオリジナルを与える親も親だと思いますが・苦笑)。


だいたい昔の「あぶさん」ってのはもっと自堕落な漫画だったわけで。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%B6%E3%81%95%E3%82%93


高校時代に甲子園の予選決勝でホームランを放つも飲酒が発覚し、放校処分になってその後もグダグダな生活を送ってるところをスカウトの岩田鉄五郎(水島ファンなら「!」ですね・笑)に拾われ、南海に入団するってのがスタートなわけですから。
登場はもっぱら代打で、酒しぶきを上げてかっとばすも時にはダイヤモンドを回るのもよれよれ、ヘルメットの中に吐いてしまうこともしばしば、なんてアンチヒーローだったわけですよ、あぶさんこと景浦安武は。
しかしサチ子さんとの結婚前後から様子が変わってくる。スタメン常時出場を果たし、代打屋を卒業して四番レフトに定着、47歳にして三年連続三冠王になるわ、翌年は王さんを抜くシーズン56本塁打やるわ、60歳にして打率四割を記録するわ(笑)、いやはやとても人間ではない活躍を見せるようになっていったわけですね。家庭人としても実に円満、初期のやさぐれたあなたはどこに行ったの?って感じなんですが(苦笑)。


さて「あぶさん」と同時期からビッグコミックオリジナルでの連載を続けている漫画がもう一つ。
そう、言わずと知れたジョージ秋山先生の「浮浪雲」なんですが。
この「浮浪雲」、品川の駕籠かき屋を営んでる通称・浮浪雲とその周囲の人々を描く人情談が基本であるわけですが、しかし初期の頃はこれまた少し違ったのですね。
そもそもが幕末が舞台ですから、坂本龍馬は出てくるわ、その龍馬が暗殺されて息子の新之助君がショックを受ける話が出てくるわ、勝海舟も出てくるピーナッツ事件ことロッキード事件を思わせる汚職話とか(笑)、まあそんなのがいっぱい出てきてたわけですよ。
さらにはまるで必殺仕事人のごとく浮浪雲が悪人をぶった斬る話も出てきたりする(結構人斬ってんですな、雲さんは^0^;)。
まあ本来70年代の大人漫画ですから結構殺伐としてたんですよ、「浮浪雲」は。
これまた80年代に入る頃から雲さんも実に円満な人格者になり、人生訓をさりげなく語るようなキャラになっていきますが・・・。
(ちなみに僕は高校時代に「あぶさん」も「浮浪雲」も全巻読み返してえらく感銘受けたもんですねえ。高校時代に読むべき漫画だと思いますよ、この二作は。・・・まあ30過ぎると初期のそれが懐かしくなるんですけどね^^;)


まあそんな「あぶさん」と「浮浪雲」。そのうちの一作でいよいよあぶさんがユニフオームを脱ぐ回(巻中カラーでそれほど目立たない扱いでした)のその号において、いったい「浮浪雲」は何を描いていたか?


雲さんが川の流れをながめながら、じっと物思いにふけっている。
その心中を、いつも出てくるご隠居の「先生」が代弁する。


「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず・・・ですよ」


「人の生き死にも大政奉還も新政府もあらゆることが流れゆきます。
そして流れ逝きます。そういう心境であそこに立っているのだと思いますよ」


あぶさん浮浪雲も流れゆく水のごとく流れていく。
その止めようもない流れの中で、しかし我々は生きていかねばならないのだ。
そういう思いをこめた浮浪雲の、そしてジョージ秋山のエールのように思うのですねえ、これは。


17,8の頃に感銘を受けたものを改めて四十半ばにして噛みしめることになっちゃいましたよ(苦笑)。
この号は僕にとっての宝物になるかも知れません、ええ。






てなこと言っといて、「あぶさん」まだまだ連載続けるみたいなんですけどな!!(爆死)いったい何するの? まさか監督業!?


横目でそっとその流れゆく末を見ていきたいと思います(^0^;)。
ではではまたー。