ふるきち、「東京奇譚集」を読む。

ようやく読了しました。

正直「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」は今ひとつピンと来ませんでした。
ある種の人生を描かんとしてるのは分かるけど、こちらのアンテナに引っかかってこないのだなあ。好みの問題と言われればそれまでなのだけど。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は文体にしびれました。チャンドラーを思わせるというか、「ハードボイルド・ワンダーランド」の主人公を思わせるというか(笑)。しかし結末はあまりにも拍子抜け。巽孝之は「レイモンド・カーヴァーの作品を思わせる」とか新聞書評で言ってたけど、どうかなあ。
今回僕が一番気に入ったのが「日々移動する腎臓のかたちをした石」。なんかエリック・サティの曲の題名を思わせますね。「ぶよぶよした胎児」とか(笑)。腎臓石の寓意がどうとでもとれるし、淳平の小説に出てくる女医も、淳平のアニマともとれるしキリエの分身ともとれる。いやいっそ腎臓石こそが淳平ともとれるわけで、いろいろな読み方を許す奥の深い小説だと言えます。こういうのも春樹さんの作風の中なのだなあと、感心いたしました。
品川猿」も猿の寓意を色々考えることが出来ますが、これはむしろ女性が読んでこそ面白い小説かも。しかし春樹さんって人も嫉妬の感情がなさそうな人ですね、基本的に(笑)。
ついでに言えば「ハナレイ・ベイ」が載ってるのに、なぜ「東京奇譚」なんだろう?(笑)。後、同作の中でサチに「ビーズの曲知ってます?」と若者が聞くとこも笑えました。さすがにピアノ弾きの女性にビーズ(B′Z)はないでしょ、春樹さん(^^)。


全く畑違いですが、本田透の「電波大戦」も読みました。岡田斗司夫だの竹熊健太郎だのとの対談も載ってて実ににぎやか。しかし春樹さんにはまったく理解しがたい世界(純正オタク世界)だろうなあ(^^;;;)。