今日でおわり神戸編

ミヤです。 聖地めぐり(神戸編)最終回です。

神戸港の倉庫街で夕日を眺め時間を過ごすが、18時を過ぎたのを確認してから港を後にする。
三ノ宮駅に戻った私はJ's BAR(仮名)を目指した。そのお店は今は地下ではなくビルテナントの二階にひっそりと開かれていた。
夕闇包まれた路地裏、ネオンの光もさほど届かない。あまりに薄暗く、知らなければ素通りしてしまいそうだ。その上、看板の照明は消え、店内から漏れてくる光もかなり弱い。
どうしたのだろう・・・
はやる気持ちを抑えつつ、狭く暗い階段を一歩一歩登ってゆく。すると見えてきたのはカウンターのスツールに腰掛け、タバコを燻らすひとりの若い男性の姿だった。カウンターと離れた場所には確かにジュークボックスとピンボールがあった。壁には見慣れたタイトルの映画のポスターも未だに貼ってあった。
あの〜、J(しつこいようですが仮名)?
彼はゆっくり振り向き、そしてはにかんだように口を開いた。
ああぁ、いらっしゃい。 お店は7時からなんですが・・・
(しばし無言、表情が消えてゆく)
どうしてもというなら入ってもいいですけど・・・
ふ〜 現実のJは初めての客にはずいぶん冷たいようだ。
友人の紹介できたのだ。
そう告げたかったが、台詞を飲み込む。また来る、とだけ言い残し店を後にする。
旅の最後がこんなオチか。ビールとフライドポテトは夢と消えた。
一抹の寂しさを感じないわけではない。しかしそんな感傷はたこむす(たこ飯のおむすび)とたこやき(現地では明石焼きとはいわない)と引き換えに駅にほど近い店に置いてくることにする。
新幹線がホームに滑り込んでくるまではすこし間があった。車内で落ち着く頃にはたこ焼きは冷めていた。しかしそれでも旨みのきいたダシとフワリとした卵の触感が旅の疲れを心なしか癒してくれた。次に頬張るたこむすは、ほどよく色づいたご飯に混ざったタコの歯ごたえが印象的で、かみ締めるごとにJ'sBARでの一件を慰め鼓舞してくれているかのようだった。
お茶と共に最後の一口を飲み込み、ようやく一息つく。
ふー、やれやれ。
お決まりの台詞が私の口から漏れる。
暗闇に包まれた新幹線は新神戸駅を離れ、私の人生の目的地、いや次なる通過地点に向かっている。


神戸編おわり。東京編は未定です。