もうじき終わり DAY TRIPPER

倉庫街から眺める神戸の夕日

ミヤ(仮名)です。聖地めぐり(神戸編)その3です。

50mの海岸線を歩き芦屋川の河川敷から阪神線の駅を目指す。そろそろ日差しも弱くなり、西に傾き始めている。
時間の少なさを気にしつつも、1km弱を自分の足で刻む。
そもそもこの川って・・・ 水が流れていない! いや正確に言うと全く流れていないのではないけれど、上流からの流れは海に注がれず、途中で消えてしまうくらい水量が少ないのだ。
干上がってしまった川岸は芦屋住民が散策し、犬が散歩するためのエリアと化している。そんな風景を眺めながら暫らく歩くと、やがて高架線が見えてくる。
芦屋駅だ。
改札を抜け、プラットホームに立つと西日が差し込み足元を赤く照らしている。
そこにはデパートの買い物袋を提げた年配の女性、子供連れの若い母親らに混じり学生、サラリーマンなど人の流れがあった。
西日に照らされた芦屋の街を見渡すと川の西側にはバルコニー付きのセンスの良い二階建て住宅群が続き、つい彼らの幸せそうな日常に思いを馳せた。
そのとき私は転勤目前であり、転地のときを迎えようとしていた。大学に入ってから十数年間の東京での生活の記憶の波に引き込まれ、どっぷりと漬かってしまっていた。
どうやらそこは私の居場所ではなかったのだ。少なくとも今は・・・
列に並びながらなかなか電車に乗ろうとしない私の姿を不思議そうに見るサラリーマンの視線に気づき、現実に引き戻されあわてて飛び乗る。そこから三宮駅へ移動、港の倉庫街を目指す。
たどり着いた頃には太陽が水平線に没しようとしていた。
夕日を眺めつつ、記憶の海に浸ってみようとするが、どうやら波は去ってしまったらしく、心振るわせることはなかった。
決して神戸の夕日が美しくないわけではない。明らかに旅が終わりに近づいてしまったこの時に、今更・・・ という感覚、とでも言ったらよいのだろうか。それに現実問題として切符に印字された時間が迫っていることが気にならない訳ではなかった。
それでも西側に位置した突堤の先端近くから夕日を眺め、ドックの薄暗い光を見つめてギリギリまで時間を過ごし、BARタイムを待った。


もうすぐ終わります