単純にいい話・本屋編。

本屋好きとして、結構胸に迫る話があったので、紹介しておこう。


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ニートの19歳女の子を札幌『紀伊国屋』に連れてったら感動して泣かれた話」



先日、実家に帰った時、友人の妹のニート暦4年目の、19歳の女の子に会ってきたお話です。

彼女は中学3年生からいわゆる世間一般で言う引きこもりになっていた。
ただ、彼女はニートと言っても、実は稼いでいる。

セカンドライフという媒体を使って、月に13万ほどの収益を出し、家に5万入れると言う生活をしているのです(引用者ふるきち注・ここで引かないように。そういう話ではないので^^;)。

兄貴である友人は、彼女のPCライフを見ている時に、『ホームページを作る人のネタ帳』がお気に入りに入っている事に気が付き、私がネタ帳の管理人であると言うと、会ってお話がしたいと言い出したそうです。

私としてはそんな女の子が私のファンだと聞けば、それは会いに行かねばなるまいと思い、先日実家に帰った時に会いに行ってきました。セカンドライフのお話も聞きたかったですし。



部屋は本だらけ。
Amazonで色々買っているようで、とてもニートとは思えない感じの子でした。

セカンドライフの話を聞くと、土地販売以外にも、お金を出して、様々な投資をし、そこからデザインしたアバターを他人に生産してもらい、その生産品を販売すると言う。

収益にする為の計算が結構緻密で面白い話が出来る子でした。

セカンドライフの本以外にも、PhotoShopの本やillustratorの本とかもあり、ウェブ開発に関してかなりの興味を持っているため、私のブログのRSSを購読してくれていたようです。

彼女は『お勧めの本とかありますか?』『面白いサイトはありますか?』等、とにかく知識の飢えが感じられる子でした。
2chの話を普通に出来る女の子とあったのはさすがに初めての経験で、私も色々と話がはずみました。



彼女の検索技術はかなりものでした。
色々とわからない事があっても、彼女はGoogleを通じてあらゆることを調べて生活をしてきたので、『自分から何かを探す』という行為が、私よりも上だなぁと感じたんです。

ふと、私は札幌の『紀伊国屋』という、北海道では超大型書店の話をしました。

彼女の住む町では、大きな本屋と言うものは無く、せいぜいコンビニくらいなもの。

まぁ外には一切出ないようなので、コンビニの本の状況も中学3年までしか知りません。

現在19という若さで、セカンドライフによって生計を立てている彼女は、ある意味社会人となんら変わらないのかなと思ったのですが、彼女の情報の飢えを満たすためには、本屋が最も適切だろうと考えたのです。

インターネットをすればするほど、私は本屋の偉大な力を思い知ります。
紀伊国屋のホームページはありますが、あの本屋にいってこそ『ほしい』という衝動にかられる何かを感じていたからです。

友人と、その姉とで彼女とゆっくりお話し、彼女にネットでは味わえない感動が本屋にあることを懇々と言い続けました。

髪はちょっとぼさぼさなので、友人の姉に頼んで服や帽子を借り、なんとか出発にこぎつける事ができました。



車で移動すると、札幌まで1時間半。
彼女は嫌々といった感じでしたが、私が絶対本屋に行けば、感動するからと言い聞かせて連れ出す事に成功いたしました。

このときの心境を、彼女は次のように語ってくれました。
外に出るのが4年ぶりで、めまいがしましたし、吐き気もしました。
外は雪が降り、寒かったです。でも、車から降りたら人がいっぱいいて、泣きたくなりました。
なんとか紀伊国屋へ到着したわけですが、当然のことながら人が多く、彼女は中々入りたくなさそうな感じ。

私はどうしても『GoogleAmazonにはない、立ち読みという本屋ならではの楽しみ』を伝えたかったので、3人で何とか彼女を説得し、中に入りました。

するとどうでしょうか。

彼女の顔つきがちょっと変わりました。



彼女の家には、数多くの参考書がありました。
どちらかと言えば私と同じように、技術系の本が多い。

こうした技術系の本は、一般のお店よりも、紀伊国屋は他を圧倒するほどおいてあります。

一回行った位では当然全てに目を通す事などできませんし、まして、立ち読みをして中身をちょろっと見る行為によって、時間はあっという間に過ぎ去ります。

そこで私が見た彼女は、既にもう一人の世界に没頭していました。

あっちの本。

こっちの本。

とにかく色々な本をあさり、手にとって見ては次の本を見る。

そんな行為を延々と繰り返している。

彼女は言った。
『6冊ほどどうしてもほしい本があります。』
姉に、お金を借りたいと言ってきた。

姉は『いいよ』といったけど、私はダメだといいました。

ほしい参考書があるなら、来週また来くるように言ったんです。

それは来週になれば、もっと面白い本が並ぶかもしれないと言う事を知っているからです。

また、これまで引きこもりしていた彼女を、今一度外につれて出る事が大切だと思い、私は1冊の本は買ってあげるから好きな一冊を選ぶように進めました。

2900円のJavaScriptの本が残りました。
なかなか高くて私も泣きそうだ。


彼女は4年ぶりにレジを使った買い物をした。
この時、私は後ろで立っていたわけですが、彼女はかなり震えていた。

車に戻るや否や、彼女は泣き崩れた。
緊張が解けたというのもあるかもしれない。

しかし、彼女にとってかなりの大冒険となった事は間違いないのですが、それよりも、『車』が1つのセーフティーフィールドになっている事に驚いた。

彼女にとって、家以外は安全ではなかったのだから。




彼女は、うれしくて泣いたようです。
私はどうしてうれしかったのかを聞きました。

すると、思いもよらない考察が彼女から聞くことができました。

彼女は、ネットには全てがあると信じていた。
だからこそ、外に出る必要性なども無いと感じていたのです。

それが、膨大な本に囲まれて、気が付いたようです。

ネットには、多くの人間が書評などを行っています。
誰かが言ったから買う、とか、Amazonで人気だから買う、とか。

そういう集合知によって発生する付加価値が、ネットにはほぼ必ず付いてきます。
Googleから検索するという、たったそれだけの行為でも、検索順位と言う付加価値が付いて回ります。

逆に本屋と言うのは、ほぼ全ての本が平等であり、どれを買うかは本人が調べ、考え、選び、そして購入に至ります。

本屋の面白さはここにあると私は思っています。

だれもお勧めしないような本でも、自分が見て、ほしいと思う本はたくさんあるのです。

彼女は帰りの車の中、この事に気が付いてもらえたようで、現実世界の1つの自立行為(本を誰に何も言われず買う行為)に、ある種の感動を覚えたと言ってくれました。

ありがとうありがとうと、何度も何度も言ってくれましたが、私は所詮ただ紀伊国屋を紹介しただけで何もしていません。

彼女自身が、情報に飢えるというニーズが発生したのも、こうした現実の中にある情報の欠落から来たものだと私は思います。

私はそのニーズに、たまたま答えられたに過ぎません。


これがきっかけとなり、彼女は外出する事が増えたようです。
彼女からは5000円分の図書券が送られてきました。よくもまぁこんな物持ってましたね。

まだまだ外で仕事をするというレベルまでは至らないようですが、買い物や遊園地など、彼女が4年間我慢したであろうところに、姉と友人はおしみなく連れて行ってあげているそうで、私としてもなんだかうれしくてたまらない。

また、外で仕事をするだけが、全てではないという事も、彼女のセカンドライフの話を聞いて感じていますし。

この話を彼女に、ブログで書いてもいいかと聞くと、快くOKしてくれたので、今回記事として書かせていただきました。

皆さんもネットに溺れた時は、思い出してみるといいかもしれません。
誰に聞くわけでもなく、自分で選び、考え、買い物をした時の記憶を。

それでは。また。




うん、いい話じゃないか。

この話を「セカンドライフの宣伝だ」とかなんとかいう輩もいるみたいだけど、何でやねん、と言いたくなる(苦笑)。
PCで13万ほどの収益を出し、ってのはオーバーかもしれないが、その女の子の自己申告だろうしね。そもそもこの話のキモはそう言うところにはあるまい。

PCの中でなく、実際に手にとって見られるところに知識・感動がおかれていて自分で選ぶことが出来るところが本屋の素晴らしいところではないか。この話は改めてそのことを思い出させてくれる。

大学受験の時、初めて大阪の紀伊国屋に行ったときの感動が蘇ってきました。やっぱリアル本屋はいいよ、うん。



また久々に大型書店に行ってみたくなりました・・・って今気になってるのはサンデー&マガジン共同編集のコナン&金田一傑作特集雑誌だったりする自分がいるわけですが(^^;)。

ではではまたー。